VUUR アンネケ・ファン・ヒェルスベルヘン 来日インタビュー(パート1)

2019年4月20日・21日、大阪・東京で行われた“Metal Female Voices Fest in Japan 2019” で待望の初来日を果たした、元THE GATHERING のカリスマ女性シンガー、アンネケ・ファン・ヒェルスベルヘン(アネク・ヴァン・ガースバーゲン改め)率いるメタルバンド、VUUR!待望のアンネケの来日インタビューが奥村裕司氏によって実現!
インタビューのパート1を掲載致します。


── Anneke Van Giersbergen(VUUR)interview ──
 by Yuzi Okumura
 (通訳:椎名 令)


[パート1]
──正にようやく…の来日ですね! VUURもそうですが、日本のファンはあなたが来てくれるのをずっと待ち望んでいました…!! アンネケ・ファン・ヒェルスベルヘン(以下AVG):私も日本へやっと来られて、凄く嬉しいわ! ここに来るまでにあまりにも長い時間がかかってしまったから。THE GATHERINGのアルバムがリリースされたのは、もう随分前のことだったし、その後、私はソロ・アーティストとしても作品を発表してきたけど、なかなか日本を訪れることは叶わなかった…。だから、私も他のメンバーも、みんな本当に嬉しいのよ!
──昨日の大阪公演はいかがでしたか? AVG:最高だったわ! オーディエンスから沢山のエネルギーをもらったという手応えを感じている。予想通り、日本の人達は礼儀正しいんだけど、それでいて、音楽に心を捧げていることも伝わってきた。素晴らしいことね! ただ、まだ大阪で1公演しかやっていないから、“日本のオーデェンス”という点では、まだ何とも言えないかな。また別の街に行くと、異なるオーデェンスだということもあるし。今夜(の東京公演)がどうなるのかも、なかなか興味深いところよ。でも、何故だか分からないけど、今日のオーディエンスの方が、昨日よりもっとオープンなんじゃないか…って気もしているの。もっと声をあげてくれたりとか…ね。
──持ち時間が50分と短いため、セットリストを組むのが大変だったのでは? VUURはまだ1枚しかアルバムをリリースしていませんが、THE GATHERINGの曲などもプレイしているようなので、とても50分では収まりきらないですよね? AVG:そう──やりたい曲がいっぱいあるから大変だったわ! VUURは勿論、THE GENTLE STORMもあるし、AYREONの曲も、デヴィン・タウンゼントとの曲もあるでしょ? だから、(他のメンバーと)メールで「この曲は外せない」「いやいや、だったらこの曲も!」…なんて、何度も何度もやり取りしてたのよ。日本のファンがどういった曲を求めているのか、分かっていればもっと楽だったけど、それも想像するしかなかった。古い曲が聴きたい人もいれば、ニュー・アルバム(VUURの’17年作『IN THIS MOMENT WE ARE FREE – CITIES』)の曲がイイという人もいるハズよね? まぁ、(今回の日本公演に限らず)セットリストを組む際は、いつもモノ凄く悩むんだけど。
──セットリストは、メンバー全員で民主的に決めているのですね? AVG:いや…実は私が決めているの(笑)。主にベースのヨハン(・ファン・ストラトゥム)と、ああでもない、こうでもない…とメールでやり取りするものの、私が以前に在籍したバンドの曲もプレイするワケだから。
──最終的な決定権はあなたにある…と? AVG:そうよ…(日本語で)ハイ!(笑)
──当然、THE GATHERINGの曲もやってくれると思いますが、当時からのファンも大勢ライヴを観に来ているので、みんな感激して号泣してしまうと思いますよ。 AVG:そう願うわ。だって、THE GATHERINGでは日本へ来られなかったんだものね! 今日は2~3曲プレイするつもりよ。あの時代をちょっと呼び戻せればイイんだけど。
──THE GATHERING時代は、来日の話は全くなかったのですか? AVG:うん。全然なかったわ。当時から、(同じオランダ出身の)WITHIN TEMPTATIONだとか、EPICAだとかが
活躍していて、彼等は日本でもプレイしていたのに、私達にはその機会がなかった…。そもそも、私自身はライヴのブッキングには全く携わっていなくて──どうして当時、日本に来ることが出来なかったのか分からないのよ。アルバムはリリースされていたし、インタビューもやったし、日本盤のみのボーナス・トラックもちゃんと用意していたのに…!(苦笑) だから、日本にファンがいることは分かっていた。それなのに…全くどうしてだったのかしら?
 でも、今ようやくここにいることが出来ているから、再来日が実現するよう、色々と働きかけをしなきゃね。興味を持ってくれるプロモーターや(バンドの)可能性を信じてくれる人を見付けて、彼等の助けを借りないと。新しい友達を作って、新しいファンを獲得し、ニュー・アルバムをリリースしたら、またライヴをやって──これが最後の来日にならないことを願うわ。
──次回は是非、ヘッドライナーで来日して頂きたいです。 AVG:そうなったら素晴らしいわね。あと…分からないけど、大きなフェスティヴァルとか、出られたら最高なんだけど。私達はいつでも飛んで来るわ!
──ところで…今さらながら、あなたの名前の発音を確認させてもらえませんか? 日本人にはオランダ人の名前は難しくて、なかなかウマく発音出来ないのですが…“アンネケ・ファン・ヒェルスベルヘン”で合っていますか? AVG:そうよ、大正解!(笑)
──日本で最初にTHE GATHERINGのアルバムがリリースされた時、“アネク・ヴァン・ガースバーゲン”と記されたことで、日本のファンは未だに“アネク”と呼ぶことが多いようですが、英米では“アニーク”と呼ばれていますね? AVG:うん。世界中の色んなところで、様々な発音をされてきた。それぞれで違うのよ。YouTubeには、私の名前を“どう発音するのか?”といった動画まであるぐらい(笑)。それも複数あって──なかなか面白いわ。まぁ、私達にとっては、あなた達の言語が凄く難しいし、そもそもの発音や発声があまりにも違うんだから、当然よね。ちなみに、私達はオランダでも南部の出身で、“g”や“r”はソフトで柔らかい発音になるの。アムステルダムじゃ、“r”はもっと極端に巻き舌にする感じなんだけどね。

──では、ギターの“Jord Otto”は“ヨルド・オットー”ではなく、“ヨホド・オットー”…みたいな? AVG:そうそう。難しいでしょ?(笑) オランダ人の名前は──特に“g”と“r”がね。
──もっと練習します(笑)。そういえば、VUURのデビュ―作は“CITIES”と副題が付いていて、実際に世界各地の都市について歌われていますが、この来日公演が終わったら、「Tokyo」か「Osaka」という曲を書いてくれるのではないか…と、日本のファンは期待していますよ。 AVG:そうね。是非、そうすべきだと思う。こうして日本に来ているんだもの。実際、私は旅を通じて、新しい世界や違う文化を見て、それぞれの都市にインスパイアされてきた。そうして各都市のことを曲にするのは、とても素敵だとも思っている。でもね、ここ(日本)にいると、中欧や北欧とはあまりに違っているから、これまでになく衝撃を受けたわ。南北アメリカは、わりと私達が住んでいるヨーロッパに似ている。でも、今は極東にいて、ライフ・スタイルも話し方も言語も全く違うから、次にどこかの都市について書くのなら、絶対に日本から選ばなきゃ!
 それはバンドの全員が思っているの。みんな朝から晩まで、常に「何て違うんだ!」「でも、それが素晴らしい!!」と言い合っているのよ。日本滞在中、出来る限りあなた達について、そしてあなた達の国について学ぼうとしている。私達は何年もツアーを続けてきたけど、いつも新しい何かを見つけよう、そこから刺激を受けよう…と思ってきたわ。
──日本食は試してみましたか? AVG:ええ! お寿司は大好きよ。オランダにもスシ・バーは沢山あってね。大人気なの。どの町にだってあるぐらいよ。だから、メンバーみんなで「日本のお寿司はもっともっと美味しいに違いない!」と、凄く楽しみにしていた。その結果、予想以上に美味しかったわ!! やっぱり水が違うし、そもそも新鮮さがまるで違う。とにかく、常に「どこのお店が美味しい?」と訊きまくっていたの。良いお店の情報なら大歓迎よ(笑)。そうして、日本の伝統的な文化を出来る限り堪能しようと思っている。
──ラーメンはどうでしょう? AVG:ああ、食べた! でも…私って、お箸が下手で。本当に酷いモノよ。ある日、ひとりでラーメンを食べに行ったのね。他のメンバーは、どこか別のところに行っていたから。それで、何とか注文することは出来たんだけど、スープの中で麺がツルツル滑っちゃって、なかなか食べられないの(苦笑)。だからちょっと考えて、日本の人達がどうやって食べているか、観察しようとしてみた。ところが、みんな“ズズズ~♪”って食べるのが速くて、よく分からない…。そしたら、店員の女性が気を利かせて、「フォークを使いますか?」って訊いてくれたの。でも、やっぱりお箸で食べたいじゃない? だから、何とか頑張ってお箸を使って食べたわ。結局、食べきるのに1時間もかかってしまったけど…(笑)。
──ひとつ確認ですが、THE GENTLE STORMはまだ健在ですか? AVG:そうね──ある意味では…。まぁ、私とアルイエン(・ルカッセン)でやっているバンドだから、将来的にアルバムはいつでも作れると思っているの。「またやろうか」という話になってもいるわ。アイディアは沢山あるし。それに、VUURのメンバーの半分はTHE GENTLE STORMのライヴ・メンバーでもあるから、やれないことはない。でも、アルイエンはAYREONで新しいアルバムを作っているし、私もVUURの新作に取り組みたいから…。今は、「この先、またやりたいと思っている」と言っておくわ。
──アルイエンはTHE GENTLE STORMのライヴには参加していませんね? AVG:彼は基本ライヴはやらない。彼自身のショウをやる時を除いて…ね。何というか、ステージに対して神経質なところがあるのよ。カリスマ性があって、素晴らしいプレイヤーだから、私達には理解しがたいところね。いつもおどおどして、「いやぁ…ダメだな」なんて言ってるの。以前にアコースティック・ギグとして、2週間一緒にツアーをやったことがあって、それも私が連れ出したんだけど(笑)、全日程を終えて、「楽しかった?」って訊いてみたら、「そうだね。でも、2度とゴメンだ」と言っていたわ。
 実際、彼は毎晩ナーヴァスになっていた。それに彼って、凄く背が高いじゃない? だから、飛行機に乗ったり、車に乗ったりして移動が続くと、かなりの負担になって、腰とか脚を痛めてしまうの。つまり、身体的な理由もあるのよ。演奏面では、ステージでも本当に素晴らしいのにね~。
──ずっと前のことですが、アルイエンがラナ・レーンというアメリカの女性シンガーのバック・メンバーとして来日し、ライヴを行なったことがありました。その時は、普通にステージを楽しんでいるように見えましたが…? AVG:そう、以前は違ったのよね。でも、時が経つにつれて、どんどんナーヴァスになっていったの。それで、ステージに立つ機会をどんどん減らしていって、余計に酷くなった…というか。ただ彼は、今もステージに立っている瞬間は、演奏することも、オーディエンスのことも愛していて、観客も彼に大歓声を届けくれる。でも、ステージに立つまでが大変で──(憂鬱な表情を模し)「ああああ~、イヤだぁ~。やりたくない~。もういっそ、俺を殺してくれ~」ってね(苦笑)。それなのに、いざステージに立てば、「ああ…最高だ! ボント最高だよ!!」ってなっちゃう。そしてショウを終えると、「酷い客どもだ! ああ、最悪だった!!」と変貌するの。実際には、魔法のように素晴らしいプレイヤーなのに。
──あと、あなたはMAIDEN UNITEDという、IRON MAIDENの曲をアコースティックでカヴァーするバンドでも歌っていましたね? AVG:うん。でも、最近はやっていないの。私が最後に参加したのは、4~5年前だったと思う。そもそもMAIDEN UNITEDっていうのは、その時々に集まることが出来るメンバーでライヴを行なっていて、毎回ちょっとずつメンツが違っているのよ。ライヴもそんなに頻繁にやらなくて、年に2~3回とかかな。というか、いま私は自分の活動で手一杯だから、ここしばらくは参加出来ないでいるわ。

── パート2に続く ──